top of page
ニュー・シネマ・パラダイス

友達に教えてもらったこの映画祭で、過日2本目のフイルム、「ニュー・シネマパラダイス」を

見てきた。

 

さらに、TVでも再放送があり、見ていたら、新しい発見があった。

 

監督は、ジュゼッペ トルナトーレ。日本では、「海の上のピアニスト」や、

今回みた「ニュー・シネマパラダイス」などで知られるイタリアの大監督だ。

 

物語は、故郷、シチリアで多感な少年期を過ごし、今は映画の監督になっている大人の

フラッシュバックを使った回顧の物語だ。

 

この映画についてはあとで触れるけれど、この映画を見て、

僕にもフラッシュバックしてきたものがある。

 

若いころ、1970年代に2年ほど、ミラノに住んでいた。この映画を見ていて、

その頃のミラノの映画館の場景が思い出されたのだ。この映画の大部分の画面は、シチリアの田舎の小さな映画館の中の映像だ。それが、昔、僕がミラノの映画館で見た場景をはっきり蘇らせてくれた。

 

今もそうだけれど、イタリアでは外国映画はすべて吹き替えで上映される。日本のように字幕なんてものはない。もともと、映画は戦後の民衆の一大娯楽、唯一の娯楽であったから、文字の読めない人もたくさんいたわけだ。だからイタリア語に噴き替えればだれでも映画を楽しめるというわけだ。

 

結果、アランドロンも、オードリーも、ジョージ・チャキリスも、日本の侍も、みんなみんなイタリア語を話す。南ドイツのノイシュバン・シュタイン城を初めて僕に教えてくれた映画、「チキチキ・バンバン」でも英国映画なのに、登場人物はみんなイタリア語で話す。なんだか変だなと思ったら、すべて吹き替えだった。

 

残念ながら(?)、ミュージカルの歌、映画に出てくる歌は吹き替えられないから、フランス語だし、英語だったりする。声の質の似た声優さんをたくさん揃えていなければできない映画の吹き替えだ。登場人物が、突然別の質の声で歌いだしたら、見ている方だって混乱するはずだ。

 

「ニュー:シネマパラダイス」に出てきた映画館の場景も懐かしかった。今のイタリアでどうなのかは知らないが、僕がミラノにいた頃の映画館では、上映中、食べ物を持ち込んで豪快に食べながら、ワインを飲みながら映画を見ていた。観客同士のおしゃべりも自由だし、場末に行くとタバコを吸っている人もいた。映画の中の出来事や場面にも一喜一憂する。とにかく客席がうるさいのだ。映画に集中できないってことだってある。

 

映画の最後のテロップが流れて終わりになると、映画が気に入ればみんなで大拍手だ。「ブラヴィー!!」と叫ぶ者もいる。

 

そして、なぜか知らないけれど、映画館の中に警察官が制服で立っていた。観客同士の喧嘩とか、よほど目に余る行為をやめさせる意味があったのだろう。

 

この映画を見て起こった僕のフラッシュバックはこのあたりにして、「ニュー・シネマパラダイス」に話をもどそう。

 

あらすじは、シチリア(トルナトーレの故郷でもある)で少年、トトは映画館の映写室に入り込み、映写技師アルフレード(フィリプ・ノワレの素晴らしい演技)と仲良くなり、自分も映写技師となる。しかし失恋と従軍を契機に、シチリア島を出てローマで映画の有名な監督になる。ママからの突然の電話で知ったアルフレードの葬式に出席するため、30年ぶりに帰島する。シチリアに帰島を決める過程で、自分の少年期を一人回顧する。

 

何と言っても、現実の時間と、過去の時間へのフラッシュバックのうまさに引き込まれた。

そして、この島から旅立つとき、アルフレードからトトだけに、他の人に聞こえないようにいった言葉にうたれた。

「島を出たら絶対に帰るな!」「外で大きく羽ばたけ!」と青年に対する言葉だ。彼は自分の死にまぎわに、「トトに自分の死を知らせるな」と言い残す。

 

最後は、葬儀をすませてローマにもどった監督が、その昔、カトリックの司祭さんが検閲してカットした数限りないキスシーンや、ラブシーンの細切れフイルムをつなぎ合せて、数限りないキスシーンやベッドシーンの連続するフイルムを見ている現在で終わる。監督の目に涙が浮かぶ。

 

この映画を見て感じたことは郷愁だった。僕自身の少年期への郷愁だった。

360度、どの方向へも進んでいける可能性に満ちていた少年時代。 そして、一方、現実にこれまで生きてきた自分、そして生きている今。

 

こうした長い時間と大きなギャップが、僕に郷愁を感じさせたのだろう。 自分を振り返らせる映画だった。鑑賞をお勧めします。

 

P.S.

この映画は、トルナトーレの撮ったドキュメンタリー、「マルチェロ・マストロヤンニ・甘い生活」を思い出させてもくれた。

ローマ郊外のチネチッタでのカメラワークが美しかったとおぼえています。

 

 

<この写真は、flickerから、イタリア SupergaCinema.it社の「ヴェネチアのGiuseppe  Tornatore」をお借りしました

 

クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。

bottom of page